『娘の誕生日』

花子は今日で5歳になる。
愛する我が子のために、あの子の好きなショートケーキと、最近また新しく始まった、日曜朝のアニメ番組で出てくる”魔法のステッキ”とやらを買って帰る。
これが意外に痛い出費なのだが、あの子の笑顔が見れるなら安いものだ。
家に帰ると妻が玄関で出迎えてくれた。
「おかえりなさい」
と、最近寝不足なのか、少しやつれている顔で微笑んでくれる。
「ただいま」
そう返事すると、かかとがすり減り始めた革靴を脱ぎ、丁寧に揃えた。
キッチンからは、娘のために妻が頑張っただろう手料理の匂いが、玄関まで漂ってきていた。
ケーキを妻に渡し、書類の入ったカバンを自室に軽く放ると、プレゼントの入った紙袋を持って、娘のいるリビングへと早歩きで向かった。
「パパ、おかえり!」
そう聞こえた気がした。

部屋の隅に置かれた小さな仏壇の前に腰を下ろし、綺麗に包装された”魔法のステッキ”を写真立ての横に置くと、鈴を軽くチーンと鳴らした。

あとがき